■■ シンポジウム「中池見湿地とラムサール条約 〜敦賀から世界へのメッセージ〜」 ■■
福 井 弁 護 士 会

 福井弁護士会では、日本弁護士連合会、中部弁護士連合会の共催で、下記のとおりシンポジウム「中池見湿地とラムサール条約 〜敦賀から世界へのメッセージ〜」を企画し,実施いたしました。

 日本弁護士連合会では,以前から人類が地球における生態系の一部をなすものであり,自然環境の保全が人類の存続にとって不可欠のものであるとの認識のもと,自然環境の保全活動を人権擁護活動の一部と捉え,活動を行って参りました。そして,最近では,2002年に福島県郡山市で開催された第46回人権擁護大会において,湿地が生物多様性にとって重要なものであるとの認識のもとで「湿地保全・再生法の制定を求める決議」を行っております。私たちの住む福井県には,地下40メートルにわたる泥炭層を有し,生物多様性にも富んだ世界的に見ても貴重な湿地である中池見湿地が存在しますが,この中池見湿地の存在は,県内でも十分に知られておりません。前述のような立場で活動をする当会としては,この中池見湿地の保全を図ることが必要であると考え,その方策を探るべくシンポジウムを開催させていただきました。

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日 時 2005年2月26日(土)午後1時〜5時(正午開場)
場 所 福井県敦賀市「プラザ萬象」小ホール MAP
参加費 無料
主 催 福井弁護士会・日本弁護士連合会・中部弁護士会連合会
スケジュール
13:00   開会
13:05   基調講演
 京都大学名誉教授 河野昭一氏
    基調報告
  福井弁護士会
14:25   パネルディスカッション
 京都大学名誉教授 河野昭一氏
 NPO法人ウェットランド中池見関係者
 敦賀市関係者(予定)
 福井弁護士会会員弁護士  
コーディネーター 弁護士 安藤 健
16:40   質疑応答
16:55   閉会
 
子ども達に伝えたい自然のふるさと,中池見
 昔は川にたくさん泳いでいたメダカがいまや絶滅危惧種…何とかして子ども達に自然を伝えたい!と願う人は多いでしょう。敦賀には,そんな皆さんの願いに答える自然のふるさと,中池見湿地があります。
 広さ25ヘクタールに及ぶ湿地に広がる厚さ40メートル以上の泥炭層には,10万年分以上の植生や気候変動が記録されています。多様な水環境により,微生物,植物から猛きん類まで,生態ピラミッドの各層の生き物が豊富で,学術調査で確認された動植物種は,何と2112種類。これにはクマタカなど多くの絶滅危惧種も含まれます。特にトンボは70種が確認され,自然の状態での確認種数としては全国屈指といわれます。目立たないけれど,実は福井県が全国に誇れる場所なのです。
そこに行けばいつでも,昔ながらの自然があって,貴重な動植物を観察できる中池見湿地は,市民にとっても貴重な憩いの場所といえます。
 
市民の力で守られた湿地
 そんな中池見湿地も,これまで何度も大きな危機にさらされ,そして,市民の力で守られてきました。
 中池見湿地の保全を求める運動が始まったのは90年秋ころ。92年,福井県があっせんして敦賀市が誘致する形でLNG(液化天然ガス)備蓄基地計画が浮上。その環境影響調査の過程で重要湿地であることがわかり,反対運動が高まりました。
 こうした中で2002年春に計画が中止され,2003年暮れには計画地全域と大阪ガスが造成した施設の敦賀市への寄付が決まりました(2005年3月に寄付予定)。現在,敦賀市が設置した中池見検討協議会で湿地保全の協議が行われていますが,住民参加や情報公開の点で問題も指摘されています。

中池見の歴史
 中池見は,古くは朝倉始末記(16世紀)に登場する。中池見湿地の西側にある天筒山は、かつて城があり、朝倉義景が織田信長と合戦を交えた場所。よもや深い沼を越えて敵が攻め入ることはあるまいとの朝倉方の油断をついて,信長は中池見側から城を攻め,これを攻め落とした。ちなみに天筒山の北西,現在の敦賀火力発電所の南にあった金ヶ崎城(現在は城趾のみ)は,朝倉方が越前の守りの要とし,古くは南北朝時代に新田義貞も激しい籠城戦を闘った場所として知られる。
 また,江戸時代に行われた新田開発の際に切られた杉の巨木の切り株は「ネギ(根木)」と呼ばれ,今も湿地のあちこちに残る。
Key Word ラムサール条約
「特に水鳥の生息地として国際的に大切な湿地に関する条約」(1971年締結)。ラムサールは条約発祥の地であるイランの都市の名前。

世界も中池見湿地に注目!
 中池見では,LNG備蓄基地計画反対運動の中で,市民によるナショナル・トラストの運動が進められてきました。99年コスタリカで開催されたラムサール締約国会議には市民団体から代表が参加し,中池見湿地の生物の多様性をアピール。2000年夏のカナダでの国際泥炭・湿地会議でもシンポジウムやポスターセッション,ブース展示など多様な取組みを行い,中池見湿地の生物多様性は国際的にも注目を集めました。
 計画が撤回された現在,全国各地から参加者を集めた自然観察会や,湿地内の水路整備などの保全活動が,市民団体によって取り組まれています。
 
中池見湿地の未来−
住民参加の保全活動とラムサール条約登録問題
 将来にわたり中池見湿地の環境を保全していくためには,今後の湿地保全活動をいかにして地域住民全体の活動として取り組むかが,重要な課題です。しかし,未だ中池見湿地の存在と重要性は十分に知られてはいません。
 そんな中,湿地保全を恒久的なものとするために,ラムサール条約登録を求める運動が進められています。
コスタリカのラムサール締約国会議で2005年までに登録湿地を倍増させることが決定されたのを受けて,環境省も登録湿地数倍増に向けた作業を進め,2004年9月に国内候補地を発表しましたが,中池見湿地は候補からもれました。
恒久的に湿地を保全し,子ども達に伝えるために,いま何が必要なのか,市民と行政が一緒になって早急に議論を深める必要があります。
 

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