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1月29日(木)

 雪のためコペンハーゲンからフランクフルトに向かう飛行機が2時間近く遅れて、フランクフルト空港で大阪行きの飛行機に乗り損ねてしまった。どうしようかと困っていたら、同じ飛行機会社の名古屋行きの便がうまい具合に遅れていたので、ぎりぎりで名古屋行きの飛行機に乗り込むことができた。

 1月19日から始まった10日間の旅がようやく終わる。環境エネルギー政策研究所の飯田哲也所長と大林ミカ副所長に素晴らしいプログラムを作っていただいたお蔭で、ヨーロッパにおける自然エネルギーの取り組みについて大体のイメージをつかめることができた。

 ここで若干の総括的な感想めいたものを述べることとしたい。

 歴史学者のトインビーによると、文明は文明を脅かす「挑戦」に「応戦」することによって進歩するという。
 逆に、挑戦に対する応戦を怠れば、その文明は衰退の道をたどり、やがて滅亡することになる。
 さらに、トインビーは、挑戦に対する応戦は、常に「創造的少数者」の発見を多数が模倣することによってもたらされるという。

 例えば、人類の生産力を飛躍的に高めた現在の工業社会文明は、イギリスで始まった産業革命を世界中の国が次から次へと模倣することで広がったものである。
 18世紀に始まった工業社会文明は人類に未曾有の物質的繁栄をもたらしたが、20世紀後半にいたって、地球温暖化という地球の破滅を招きかねない「挑戦」を受けるにいたった。
 この挑戦にいかに「応戦」するかが21世紀に生きる我々の課題なのであるが、この場合、応戦方法を考え出す「創造的少数者」は誰かというと、飯田さんによると、スウェーデン、デンマーク、オランダの三ヵ国なのだという。
 この三ヵ国が化石燃料及び原子力から自然エネルギーへの転換が現実的な政策であることを自ら実証し、ドイツが先進的な模倣者という役回りで、EU諸国全体を自然エネルギーへの転換に巻き込んでいる構図だ。

 もちろん、電力会社や産業界の強力なロビー活動のため、国ごとに自然エネルギーへの転換の進捗状況にはばらつきがあるが、地球温暖化という工業社会文明への挑戦に対する応戦は、原子力ではなく自然エネルギーでなされなければならないという点については、ヨーロッパ諸国の間で共通の認識となっていることが今回の出張で確認された。

 こうした見方をすると、京都議定書の批准を拒否しているブッシュ政権下のアメリカは明らかに文明に対する挑戦を無視していることになる。
 では、日本はどうかというと、地球温暖化という挑戦を無視しているわけではなく、もっぱら原発の新規増設という形で応戦しようとしているのである。この応戦の仕方については賛否の分かれるところであり、すでに述べてきたようにヨーロッパ諸国は原発の新規増設という選択肢を頭から除外しており、国際社会では原子力を偏重する日本の政策は極めて奇異なものとして捉えられているようだ。

 ちょうど、帰国する飛行機で読んだ1月29日付日本経済新聞の一面トップの記事は、経団連が政党評価をしたというものだった。
 この記事によると自民党のエネルギー・環境政策は原子力への信頼回復を評価して「A」、民主党のエネルギー・環境政策に対する評価は環境税への導入が掲げられているとして「D」だった。
 こうした記事を読むと、一般読者は原発を推進する自民党が現実的で、環境税を導入しようとする民主党が非現実的と思いがちではないかと危惧する。実際には、こうした形で電力会社と産業界によってじわじわ形成される日本の常識こそが世界の非常識になりつつあるのである。

 グローバルな市場で競争力を持つ強力な産業界の存在なくしては、我々が現在、享受している物質的な豊かさを維持することはできない。
 しかし、グローバル化が進む中での政治の役割は、産業界が競争力を保持できる環境を整備することもさることながら、容赦のない経済のグローバル化に対応できない経済的弱者に対する目配りを怠らないことではないか。

 こうした意味で、自然エネルギーへの転換を単に地球温暖化という「挑戦」に対する「応戦」としてだけでなく、グローバリゼーションの中での地方の困窮化という「挑戦」に対する「応戦」として戦略的に位置づけているヨーロッパ諸国の試みから学ぶところは大きいのではないだろうか。
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